分水嶺 ~その4
その日の夜遅く、自室から出てきた息子が私に尋ねに来ました。
「母さんは僕が憎くないの?殺したくない?
憎まれれば、(その相手を)憎むものでしょう。」
「普通はそう思うものだよね。ところがぜ~んぜん。
母さんは君がほんとに大好きだよ。何も変わらない。不思議だよね。」
私の感情が全く理解できないという感じの息子。
ただ、私が自分のことを憎んでも、嫌ってもいないのは伝わったようでした。
私が懸念してきた中学校以降の息子のかたくなさについて
今の主治医にも話してはありましたが、
今の主治医も息子に初めて会ったのは、息子が中学に入学する数週間前。
なので、主治医の中にある息子の印象も
<かたくななところのある>というものだったようです。
息子のそうした部分に感じてきた私の危機感については認めてくれて、
少し羽目を外しても、受け入れられてもらう経験が必要かもしれないと
話してくれていましたし、
そのことも含めて、高校のほうには連絡と協力とをお願いしてきました。
そうして、夏休みに突入し、
一見、何も変わらないような時間が過ぎては行きましたが、
私にとっては大きい手ごたえを感じた時期でした。
息子の笑い方が、昔の屈託なく笑っていたころの彼のものに近づいてきたから。
あの時の賭けは失敗には終わっていないと思いました。
最近のコメント